『手の倫理』

『手の倫理』

自分は正解を知っていると思っている人ほど、つまりトレイナーとしての自信がある人ほど、もしかすると伝達モードに落ち入りやすいのかもしれません。倫理には、道徳と違って、いつでもどこでも通用する「一般」はありません。この意味で、倫理は常に生成的です。「こうあるべきだ」という一般則としての道徳の価値を知りつつも、具体的な状況というライブ感のなかで行動指針を生み出し続けること。手の倫理は、接触を通して相手の体を生きさせることと密接な関係があります。

伊藤亜紗 『手の倫理』 講談社選書メチエ, 2020, 136頁